名 前 |
カブトムシ(甲虫、兜虫、独角仙、ヤマトカブトムシ、ヤマトカブト) |
学 名 |
Trypoxylus dichotomus |
英語名 |
Japanese rhinoceros beetle |
分 類 |
コウチュウ目(鞘翅目)、コガネムシ科、カブトムシ属、カブトムシ(日本亜種)
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分 布 |
本州・四国・九州と周辺島嶼部。本来の北限地は青森県で北海道には分布していなかったが、人為的に持ち込まれ1970年代から移入種として定着。
標高1500m以下の低地から低山地の2次林(里山)に多く生息。これは成虫の餌である樹液を出すクヌギ・コナラなどの樹木が多いこと、農家が落ち葉から作る堆肥が幼虫にとって適した餌となるため。
国外では、台湾・朝鮮半島・中国・インドシナ半島。
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形 態 |
「昆虫の王様」と呼ばれクワガタムシと並び人気が高い。
体長はオス、頭角を除き19-57mm(または27-59mm)、メス19-52mm(または33-53mm)。オスは頭角を含め全長23-88mmで、日本最大の甲虫だったが、1983年、沖縄本島でヤンバルテナガコガネが発見されその座を譲る。
体色は雌雄とも赤茶褐色から黒色。体は厚く楕円形、頭部は小さい。
オスの頭部に大きな角が、胸部にも小さな角がある。頭部の角(頭角)は先端部分がY字型に分岐、中型・大型個体では前胸背板より長く、かつY字型に分岐した先端がさらにもう一度二叉するため、尖端は4つとなる。胸部の角(胸角)は、頭角の3分の1程度の長さで分岐した先端が尖る。この角は外骨格の一部が発達したもので、餌場やメスの奪い合いに使用。角の大きさには個体差があり体格に比例する。
角は長いほどオス同士の闘争に有利だが、タヌキやハシブトガラスなどの天敵の捕食を避けるには短い方が有利。
角の大きさは、幼虫時の栄養状態の優劣と遺伝により決定。大きなオスが立派な角を持つ一方、小さなオスは角への投資配分を下げ他の部位に投資が知られ、特定のサイズでこの配分が変化。
カブトムシは主に広葉樹樹幹の垂直面で活動、付節先端の爪のみが樹皮上での占位に使用される。
闘争では相手をてこの原理で樹皮から剥がし投げ飛ばす戦法で執拗な追跡や殺傷を行わない。
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生 態 |
夜行性。昼間は樹木の根元、腐植土や枯葉の下などで休み夜明け前に安全な場所に移動。餌場争いに負けるなどで、夜間、餌にありつけなかったり産卵期のメスは日中も摂食を続けることがある。
樹皮が柔らかく容易に樹液を分泌するシマトネリコでは昼にも多くの個体が活動を続ける。
幼虫は腐植土(腐葉土)を糧とし、朽木や枯葉が微生物等の働きで土状にまで分解されたものを好む。成虫は口器(小顎に艶のある褐色の毛が密生、これに毛細管現象で樹液を染み込ませ、舐め取るようにしながら吸汁。
好まれる樹液を出す樹はクヌギやコナラ。それ以外には、アベマキ、ミズナラ、ナラガシワ、カシワ、クリ、ヤナギ類、サイカチ、ネムノキ、カシ類、マテバシイ、ニレ類、サイカチ、シマトネリコ、ライラックなど多岐にわたる。
日本の西南部では主にカシ類、本州の中部から北部および高標高地ではニセアカシア・サイカチ・ヤナギ類の樹液に集まる。
樹液場はシロスジカミキリのメスの産卵痕やボクトウガやコウモリガの幼虫など他の昆虫が樹皮を傷つけることにより形成される。
樹液を餌とする昆虫は多いが、カブトムシはその体格と防御力から、餌場を巡る競争で優位に立つことが多いと思われてきたが、スズメバチがカブトムシの活動時間に影響を与えるこtから樹液場の優占種というわけではない。
長い間、カブトムシの角や口に木の幹を傷つける能力がなく自力で餌場を作れないと思われてきたが、大顎でモクセイ科のトネリコや、リンゴの木の樹皮を削lり樹液を吸汁することが明らかになっている。
トネリコの木は樹皮に少し傷をつけるだけで樹液が出てくる反面、樹液の流れがすぐ止まるため、カブトムシは少しずつ傷を広げながら吸汁する作業を繰り返す。
長年、口器(ブラシ状の口)の上の「クリペウス」という硬くてやや反り返った小さな突起物で樹皮を削ると考えられていたが、大顎(mandible)と内部の歯車状の構造で樹皮を削ることがわかる。
トネリコの樹上では自ら餌場を作るため、自然に樹液が出ている木に比べ、餌場をめぐる競争は少ない事が観察されている。自ら樹皮を削り樹液を得る摂食行動は本土亜種だけでなく、台湾産の亜種(ツノボソカブト)やヘラクレスオオカブトでも観察されている。
樹液を吸う以外に、熟したり傷んだりした果物(ブドウ・モモ・スモモ・ナシ)も食べるため、害虫とする地方もあり、長野県ではリンゴの樹皮を削る被害が出ている。
成虫は光に集まる性質が著しい。鳴き声は成虫になると雌雄ともに、興奮した時や求愛行動中に腹部を伸び縮みさせ上翅の内側との摩擦によって音を立てる。鳴き声は「シューシュー」「ギュウギュウ」「ギュウィン・ギュウィン」
といった感じで、1mほどしか聞こえない程度。持ち上げたり霧吹き等を使い威嚇させると簡単に聴ける。死んだ個体の腹を押し上翅と人為的に摩擦しても聴ける。
幼虫の糞は黒褐色で匂いはそれほど感じられない。孵化後しばらくケシの実状で、2齢、3齢と成長するにつれ米粒型から1cm程の丸みを帯びた長方形になる。腐植土の種類や水分状態にあまり影響を受けず通常は固形で排泄されるが、驚いた時は水分を多く含む下痢状になる。蛹の状態では一切排泄しないが、羽化時に成虫はやや白い体液を蛹の殻内に排出する。成虫の糞は水分を多く含む液状、餌の違い、量や色、匂いにより違うものを、あたりかまわず飛ばす。一般的な市販の飼育ケースで飼育していると、飛散した糞尿の汚れで、1、2週間のうちにケース全体が汚され(蓋の裏側も含む)、内部の観察がしづらくなるほど。
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