名 前 |
スズメ (雀) |
学 名 |
Passer montanus |
英語名 |
Sparrow (スズメ科の鳥の総称) |
分 類 |
鳥網スズメ目スズメ科スズメ属。 亜種スズメ - 千島列島、日本、韓国、琉球諸島、台湾、中国南東部。 |
分 布 |
東は日本から西はポルトガルまでユーラシア大陸の広い範囲に分布、草原、農耕地、都市部と人の生活に密着した鳥。北限は北緯60数度だがインドにはほとんどいない。ボルネオ、スマトラ、ジャワ島など熱帯、亜熱帯にも分布域がある。米国では19世紀半ばミズーリ州セントルイス市に移入されたが、広範囲に分布するイエスズメとは対照的に、現在では同市と隣接するイリノイ州の一部にのみ生息、分布域は広がっていない。欧州では農耕地帯でみられ、都市部にはほとんどいない。都市部にはイエスズメなど別のスズメがいる。東アジアでは農耕地から都市部などのヒトの生活の傍で見られる。
日本では欧州の都市部で見られるイエスズメは生息せず、亜種スズメが北海道から沖縄で見られる。北海道、南千島、本州、粟島、佐渡、隠岐、見島、四国、九州、対馬、五島列島、屋久島、伊豆諸島、奄美大島、琉球諸島、大東諸島では留鳥、舳倉島、男女群島、種子島には旅鳥として、またトカラ列島にもまれに認められる。ただし、いくつかの離島、本州から1,000kmほどある小笠原諸島には生息しない。分散の機会がないためと思われる。本州から最も距離があるのに分布しているのは、沖縄本島から400kmほどの南大東島、北大東島だが、舳倉島など能登半島から50kmほどだが留鳥として分布していない所もある。 |
形 態 |
全長約14-15cm、体重18-27g。翼長6.7-7.4cm、尾長4.3-4.9cm。雌雄同色で成鳥は頭部が赤茶色、背中は褐色で縦に黒斑、翼に2本の細い白帯がある。頬から後頸、腹にかけては白色。耳羽および目先から喉は黒い。くちばしの色は黒色だが幼鳥の時は淡黄色。成鳥でも繁殖期の終わりごろくちばしの根元が黄色になる個体がいる。成鳥の頬にある大きな黒い斑は遠くからも目立ち、これが他の類似種との区別点となる。幼鳥は全体に色が淡く、頬の黒斑や喉の黒斑がはっきりしない。くちばしは短く太い円錐形で、小さな餌をついばむため都合のよい構造。嘴峰長は0.9-1.2cm。足は淡褐色、?蹠長は1.65-1.8cm。アメリカ大陸やオセアニアなどにも移入種として生息する別種イエスズメは、やや大きく、雄の頭部に灰色の太いラインが入る。 |
生 態 |
地上では両足で飛び跳ね(ホッピング)素早く移動。飛翔は直線的で急に飛ぶ方向を変えたりもできる。鳴き声は「ちゅんちゅん」。「チュン」を基調に、変化のある鳴き声を続けて発したりする。「ジュクジュクジュク」と胸を反らせ尾を上げ激しく鳴くのは縄張りを守る威嚇行動と考えられる。また、交尾の際に下の雌が、少し広げた翼を小刻みに震わせながら「ヒヨヒヨヒヨ」と細い声を発する。一般に留鳥とされるが、日本で1920年代から1940年代に行われた移動性を調べる調査によれば、移動距離が25km以内(特に5km以内)の真の留鳥集団と、100km以上移動の移動性が高い集団の存在が明らかとなる。この調査により新潟県で標識放鳥された約5700個体のうち、7個体が岡山県、3個体が高知県で標識回収の記録がある。食性は雑食性、イネ科を中心とした植物の種子や虫を、都市部では桜の花の蜜、パン屑、菓子屑や生ゴミまで何でも食べることが、都市部での繁殖を可能にした理由の1つと考えられる。繁殖期には子育てのため虫を好んで捕獲する。夏から秋にかけ稲に対する食害も起こすが、稲の害虫を食べることでも知られる。親鳥の死亡など緊急な保護で飼育の場合、ヒナは和鳥用の練り餌やぬるま湯で柔らかくしたパン、植物性の練り餌でも育雛が可能だが、充分な知識がないと成長せず死亡するケースが多い。ヒナは通常充分に飛べない状態で巣立つため親鳥が近隣で見守っているが、それを持ち帰り飼育すると親鳥が餌を運んでくる事例が確認されている。ヒナは拾い上げて持ち帰らず、近くの植え込みなどに置くと親鳥が声で見付け育雛を続ける。繁殖は春から夏頃(主に3-8月)にかけ行われ、1年に2回程度繁殖すると考えられる。人への警戒心は強いが、人の生活の傍で繁殖することで天敵などから身を守る効果があると推測される。その一方、集団で繁殖の習性があり、20つがい以上いないと繁殖しないという報告もある。巣の材料はイネ科の植物など繊維状のものを用い、営巣時期、それらをくわえ飛ぶ様が見られる。自然にあるもので営巣する場合、木の洞(うろ)や、さらに樹木の枝の茂みに球形の巣を作ることもある。ツバメなど他の鳥の古巣を利用することもあり、造巣中のコシアカツバメの巣を奪って使った観察記録もある。まれにスズメバチの古巣を利用した例も報告されている。また、トビやクマタカなど猛禽類の巣の下部裏側に営巣することもあり、これは猛禽類の近くに外敵が来ないことを利用していると考えられる。犬や猫などの毛も巣材として利用する。巣は地面近くには作らず、人の身長よりも高い位置に作ることが多い。見た目には無理と思われるような隙間でも擦り抜けられるので、スズメの巣そのものは普段目に付かないが、巣の真下付近には枯草などの巣材の残骸が散らかっていることが多いので、それを頼りに見付け出すことができる。また、雛が餌をねだる高い周波数のチリチリという鳴き声で巣の存在に気付くこともある。日本では人間の生活に密着しているので、多くは瓦の下や雨樋と屋根の隙間などの屋根の軒の隙間や、この他にも人の住んでいない家や集合住宅の換気扇カバーの中や煙突、プレハブの鉄骨の隙間や穴など直径3cmまたは
2.5 cm×4cmほどの隙間さえあれば入り込んで営巣することがある。人間が設置した巣箱も利用するが、この際は出入口の位置まで巣材を積み上げる習性がある。他に、電話線の分配ボックス、電柱トランス下のスペース、交通標識の横に伸びたパイプ等でも営巣する。巣の大きさや形状は営巣場所の穴の形や隙間により変わる。巣に人間などの外敵が近付くと「ヂヂヂヂヂヂ」と短く高い声で警告されるが、この場合、卵の有無は問わず、ある程度完成した巣であると警告を行うとされる。毎日1個の卵を産み、1つの巣に産む卵の数は4-8個とされ、5-6卵が75%を占める。2010年には、秋田県大潟村で、9卵が産みこまれていた例が報告されている。卵は灰白色で、紫褐色や灰色、黒褐色の斑があり鈍端側に多い。卵の大きさは1.7-2.25cm×1.3-1.55cm。雌雄が抱卵し10-12日で孵化する(抱卵日数は10-14日)。ヒナは晩成性で14-18日で巣立つ。夏から秋にかけ、街路樹などに数十から数百羽が集まりねぐらを形成する。その年生まれの若鳥が多いとされるが、若い個体だけでなく成鳥もまじっている。集まることで、体温の維持、翌日の餌場の探しやすさ、睡眠時の安全性どの効果があると考えられる。群れのねぐらに入らず個々の場所に定住する個体は成鳥が多いとされる。近縁で主にヨーロッパに分布するイエスズメは、喉元の黒い部分の大きさが、その個体のコンディションの良さを表し、黒い部分が大きいほど、または黒さが強いほど群れの中で優位な個体であるという研究がある。一方、スズメの頬および喉の黒い部分と社会的なランクについては、それほどはっきりした関係がないことが示されている。ただし、イエスズメについても否定的な研究もあり、スズメについてもまだ十分調べられているわけではない。都市部では、ヘビ、カラスなどが捕食者になっている。農村部ではこれらに加え、中型以上の猛禽類(例えばノスリ、オオタカ、ハヤブサ、フクロウ)も捕食者になる。かつては、ヒトも影響力の大きな捕食者であった。スズメの寿命はよく分かっていない。理由は調査があまり行われていないせいもあるが、巣立後、分散するので個体の寿命を把握しづらいためもある。一般的に野生の寿命は1年3ヶ月ほどとされ、人が飼育すれば10年程度だが鳥獣保護法で飼育は禁止されている。欧州での標識調査による推定では、秋頃に捕獲された雛が、翌年の春を迎えるまでの生存率は0.49、その後の生存率は年あたり0.32となっている。これらの値が日本でも成り立つとすると、秋頃の当年生まれの個体の期待余命は1.4カ年ほど、1年目の春を迎えた個体の期待余命は1年ほどということになる。卵の段階から巣立つまで、そして巣立った直後から秋にかけては、かなり高い死亡率と思われる。日本における自然条件下の最長寿命は、2,293日である。これは初めて捕獲されて標識されてから、次に捕獲されたまでの日数なので、少なくともこれ以上生きたことは間違いない。飼育下では、一般に自然条件下よりも長く生き(生理的寿命)、最長15年という記録がある。 |
夢見処 |
ハト、カラスとともに夢見ヶ崎動物公園のある加瀬山でもスズメが見られる。動物公園の動物たち、とくにキジなどの鳥舎は、檻の狭い格子を巧にくぐって飛来し餌にありつけるスズメにとって天国となっていた。しかし、2015年秋以降、鳥インフルエンザ対策で鳥舎全体に細かい目の網が張られたり、透明シートが張られるようになってから、スズメを見かけることは少なくなっている。 |
備 考 |
2008年、日本のスズメ成鳥個体数は、約1800万羽と推定されているが誤差があるため、数千万羽と考えるのが妥当と思われる。これは成鳥個体数の推定値なので、秋冬にはこの数倍になると思われる。スズメの個体数は減少傾向にあると言われている。三上修らの推定によると、2007年、スズメの個体数は1990年ごろに比べ少なくとも半減、減少率を高く見積もると5分の1になったと考えられている(50年前の10分の1)。減少原因は気密性の高い住宅の普及により営巣場所が減少したこと、農村でコンバインの普及により落ち籾(もみ)が減少、冬季の餌が不足したこと挙げられる。農村と比べて都市で巣立つヒナの数が少ない傾向があり、都市化に伴う餌不足も、減少原因として挙げられるが、絶対的な個体数はまだ多く、現在の減少スピードであれば数十年後に絶滅してしまうことはないと言われている。ニュウナイスズメという別種のスズメは、繁殖期には森林または北方で繁殖し、夏の終わりから秋にかけ農村地帯に現れる。益鳥としての働きをしないので害鳥としての面が強いといわれている。この稲を食害するニュウナイスズメとスズメが、スズメとして一緒にくくられることで、スズメが必要以上に害鳥扱いされた可能性もある(理由は不明だがニュウナイスズメが大規模に農村地帯に出現することは現在ではほとんどなくなった)。4月前後には巣立ちに失敗したり弱ったりした幼鳥が人間に保護されることも多く、保護ボランティアが募集される自治体もある。日本野鳥の会などでは、弱ったりしていない場合は安易に保護せず2-3時間ほど、その場所で親が来ないか離れて観察するように指導しており、衰弱している場合や親鳥が現れない場合は保護して専門家に預けるようにとしている。古くから身近な鳥なのに他の鳥のようにペット化されない理由として、飛翔力が強くカゴ内で激突して傷付き易いことや、餌を大量に食べるので糞も他の飼い鳥と比べ量が多いこと、砂浴び好きな習性のためカゴ内で餌や新聞紙に身体を激しくこすりつけ周囲に大量の餌や糞を跳ね飛ばすことが挙げられる。一方で平安時代の枕草子にも源氏物語にも雀の子飼いについて記述があり、江戸時代の俳人小林一茶の一連の俳句作品からも、雀を子飼いした形跡が伺えることから、古くからしばしば飼われていたことがあるのも確かで、いつも人の傍に寄り添っていてあまりに身近過ぎ、珍奇性に乏しかったからとも考えられる。飼ったことのある人の証言では、非常に人懐こく賢いことがしばしば言及され、清少納言も心ときめきするものとして他のどれより文頭に「雀の子飼ひ」を挙げているほどである。芸に使われることのある鳥の種類として、タカ、スズメ、ジュウシマツ、ヤマガラ、シジュウカラを挙げている資料があり、同資料においてこの中でスズメはもっとも利口だが飼育が困難、ヤマガラの方が飼育に適し、また調教が楽なので非常に流行ったとの記述がある。 |